株主の皆様には、平素より格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
当社は2022年4月のホールディングス体制発足から1年が経過しました。ここに2023年3月期の業績をご報告申し上げます。
2023年3月期の業績について売上高は2期連続、営業利益は4期連続で過去最高を更新
計測・計量機器事業は世界経済の回復を背景に堅調に推移しました。また、医療・健康機器事業では、世界的なインフレ懸念による消費者の購買意欲の低下が見られましたが、欧州でのEコマースへの参入、米州での大口案件の契約継続もあり、前期比で増収増益となりました。さらに、半導体関連事業は、前年度来の堅調な受注に支えられ、前期比で大幅な増収増益を達成しました。
その結果、売上高は590億円(前期比14.1%増)、営業利益は75億円(前期比36.0%増)、経常利益は76億円(前期比36.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は55億円(前期比54.6%増)となりました。
2024年3月期業績見通しについて売上高、営業利益ともに前期比増を見込む
当社を取り巻く事業環境の先行きは、原材料価格の上昇や地政学的リスク、金融引き締め政策による景気後退などが懸念され、依然不透明な状況であります。
しかしながら、当社は社会的価値観と産業構造の変化を好機と捉え、新規分野や成長分野へ積極的な投資を進めていくことで、2024年3月期業績見通しも引き続き、増収および営業利益増を見込んでおります。
増配について
配当につきましては、2023年3月期の業績結果が当初予想を大幅に上回ったことから2023年3月期の期末配当金を当初予想の15円から20円と5円増配し、年間配当金を30円から35円に増配させていただきます。2024年3月期の年間配当金も35円を想定しております。
株主の皆様には、引き続き変わらぬご愛顧、ご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。
― 2023年3月期 ―
― 業績推移 ―
(単位:億円)
A&DホロンHDの中期経営計画について森島社長に聞いてみました
中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の数値目標を変更されたそうですね?
はい。
数値目標について、2022年5月に公表した当初計画から一部見直しを行い、中期経営計画の最終年度となる2025年3月期には売上高660億円、営業利益92億円、営業利益率は13.9%を目指すことといたしました。
中期経営計画では、なぜ半導体関連事業を成長ドライバーと位置付けているのですか?
デジタル社会が加速する中で半導体の需要はますます高まっています。
半導体業界は微細化や3次元化、EV用パワー半導体などの技術革新により中長期的に新たな需要が増大すると予想されます。
当社は、半導体検査装置や半導体製造に不可欠なユニットを提供することで、半導体業界のニーズに応えています。
2022年に実施した経営統合によるメリットは何ですか?
経営統合により、技術連携やグループ内の経営リソースを有効活用し、事業の強化を目指します。
また、A&Dとホロンの世界最高水準の技術力を磨き上げることで、半導体業界はもちろん他の分野でも事業領域を拡大できると期待しています。
特に、デジタル社会、健康長寿社会、カーボンニュートラルなどの成長領域に積極的に取り組んでいきます。
デジタル社会、健康長寿社会、カーボンニュートラルも、非常に大きなトレンドですね。どのような技術が活用されるのですか?
当社は、EV(電気自動車)も含めた自動車の開発や安全性に必要不可欠な「はかる」技術を保有しています。
自動車が正しく走行するためには、様々な状態を「はかる」必要があります。
例えば、各種パーツにかかる力や温度を「はかる」。
実際の走行状態におけるサスペンションの動きやタイヤの向き・バランスの変化を「はかる」など。
すべての動作を「はかる」技術で数値化、データ化することで、自動車の走行を正しくコントロール、また検査をする等、適切な性能に調整することができます。
「はかる」技術が、自動車運転の安全・安心につながっているのですね!
「はかる」技術は私たちの生活にとっても欠かせない存在です。
身長や体重、体温、血圧を測って健康状態を「はかる」。
モノを引っ張る力を「はかる」。椅子がどれだけの重さに耐えられるか耐久性を「はかる」。
今、地球温暖化が深刻な問題になっている中で、CO2量を「はかる」ことも重要ですね。
自然界の情報は全て「アナログ」ですが、それを正しく「デジタル」情報に変換することが、当社の強みである「はかる」技術であり、その提供を通じて世の中から信頼を得ています。
私たちの生活は「はかる」技術で守られているのですね。
ちなみに社名にある「A&D」はアナログとデジタルという意味ですか?
その通りです。「A」は「analog」(アナログ)、「D」は「digital」(デジタル)の略です。
重さや音といった目に見えない「アナログ量」を「デジタル数値」に変換して見える化する。電気信号といった「デジタル数値」を「アナログ量」に変換してモノを適切に動作させる。
この両方における変換技術が当社の創業当時からの基幹技術です。
デジタル社会の加速にともない、より高速かつ高精度の「はかる」技術が求められています。これからも私たちの技術を活用し、成長できるビジネスチャンスはまだまだあります。
注目されているEVや、国内外の遠隔医療分野でも「はかる」技術が活かされているのですか?
もちろんです。
IoTであらゆるモノがネットで繋がり、アナログ情報をデジタル情報に変換し、蓄積・有効活用することがますます必要とされています。
例えば、新型コロナ感染症の拡大で遠隔医療の重要性が高まっています。
具体的な取り組みとして一例をお話しますと、国内では自治医科大学と連携して地域遠隔医療システムを構築中です。海外ではカナダmmHg社※と協業し、遠隔医療事業を推進しています。
他にもEV開発に必要なリアルタイムシミュレータをトヨタテクニカルディベロップメント社と共同開発し、現在販売を拡大しています。
またカーボンニュートラル社会実現に必要不可欠な計測技術・装置も提供しています。
今後も成長分野に投資をし、事業を拡大していきます。
「はかる」技術において、他社が追随できない高度・高精度で、ニッチな技術をもっているということですね。
是非、当社の技術が使われている身近な製品を見つけてみてください。
半導体関連、医療・健康機器、計測・計量機器など当社の事業領域は様々です。
私たちの「はかる」技術で、未来の高度な社会発展に寄与し、持続的な社会づくりに貢献していきます。
皆様のご期待に沿えるよう尽力していきますので、引き続きご支援をよろしくお願いいたします。
※mmHg社:カナダの法人「mmHg社」は、Dr. Raj Padwal(Alberta大学教授、高血圧疾患研究の大家)が代表を務めるソフトウェア開発に強みをもつ医師主導のデジタルヘルス企業
EV(電気自動車)開発に貢献、A&Dホロンの技術
CO2排出量を抑え、環境にやさしい自動車としてEVが注目されており、自動車メーカー各社もEVの開発を加速させています。
当社の事業の計測・計量機器事業の中でも、特にDSP機器(DSP:計測・制御・シミュレーションシステム)において、EVに関連した機器を開発・提供しています。
今回は、当社の技術がどのようにEV開発に貢献しているのかをご紹介します。
世界には様々なEVがあります
先進国では2030年~40年に向けてEV100%を目指している国が多く
市場は急速に拡大しています
EVと一言でいっても、FCV(燃料電池自動車)、BEV(バッテリ式電気自動車)、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)の4種類があります。
簡単に説明すると、FCVは水素で発電した電力でモータを動かして走る自動車です。BEVは予めバッテリに蓄えた電力でモータを動かして走る自動車で、テスラの自動車が有名です。HEVは化石燃料で動くエンジンとエンジンで発電した電気を使って動くモータとを掛け合わせて走る自動車です。PHEVは、HEVと同じ走行方法ですが、外部からの充電もできるタイプの自動車で、トヨタのプリウスなどで知られています。
2040年には、全世界の自動車台数は9,538万台と予測されています※。先進国では2030年~40年に向けてEV100%を目指している国が多く、2040年にEVは新車販売台数の半分を占めるようになると言われています。
※出所:日経BP「自動車産業2040」
世界中で加速するEV開発
電動車のバーチャル検証で活用されるA&Dホロンの技術
EVの走行にはモータが動力源として使われています。
このモータを電気で制御・コントロールするコンピュータ(コントローラ)が車両には搭載されています。新しいEVの開発には、このコントローラの開発が非常に重要となります。
今回当社がトヨタテクニカルディベロップメント社と共同開発した電気自動車開発向けリアルタイムシミュレータ「EV-Sim HELIOS Edition」(以下「EV-Sim」) は、そのコントローラ開発のための装置になります。
具体的には、「EV-Sim」をコントローラに接続することで、モータの代わりに「EV-Sim」が機能し、モータの動きをシミュレーションすることができます。つまり、実際にモータを製造しなくてもソフトウェア上でモータを再現することで、机上での シミュレーションができることになります。
シミュレーション内容の一部を紹介します。モータはバッテリの電力のみを使って、電気エネルギーをタイヤの回転力に変換しています。
その際、どれくらいの電気を使っているのか 、何キロ走っているのか 、車両に乗車している人数によっても、バッテリの消費量は変わります。モータの状態によってバッテリの消費量が変化するため、モータがどの条件でどれくらい電力を使うかをシミュレーションできることは、自動車のモータ開発には欠かせないことなのです。
上記のようなシミュレーションが正確にできない場合は実際にモータを製造したうえでコントローラの開発・検証を行い、実際の車両で試験を行わなければなりません。これにはモータの部材調達や組立、車両試験などに莫大な費用と時間がかかってしまいます。
しかし、「EV-Sim」を使用し、これらの工程をコンピュータ上で再現することで、費用の削減に加え、コントローラ開発や検証にかかる時間を大幅に短縮することができます。メーカーによっては、開発期間を50~90%短縮できたというお話も伺っています。
このようなシミュレータには、より広範囲に検証ができたり、高速かつ高精度に測定できる性能のものが求められています。 ここに当社が長年培ってきた技術が活用されています。
A&Dホロンの高速・高精度な「はかる」技術の認知度は
ますます高まっています
より正確なシミュレーションのためには、モータの電気信号の高速かつ高精度な入出力が求められます。そこに当社の「高速、高精度にはかる」、具体的には「モータに関連する電気信号を高速、高精度に入出力する」技術が活かされています。特に、今回のトヨタテクニカルディベロップメント社との共同開発で当社の技術力が高く評価され、認知度が向上しています。
最近では電気自動車用の開発ツール以外でも、二輪のモータサイクル開発用としてヤマハ発動機社に導入されました。2輪のモータサイクルにおいても、カーボンニュートラルの実現が技術開発の中核になっており、内燃機関に組み合わせるSMG(スマートモータジェネレータ)※1を短期間で効率的に技術開発していく上で、「EV-Sim」を採用し、シミュレーション試験に取り組んでいます。既存システムを最大限に活用しながらHILS※2環境を構築し、SMGの評価期間を90%削減できたと聞いています。
ヤマハ発動機株式会社事例はこちら- ※1 SMG(スマートモータジェネレータ):静粛かつ低振動なエンジン始動を実現する技術
- ※2 HILS:自動車に搭載されたコンピュータのテスト装置
私たちの「はかる」技術で、環境にやさしい社会の実現へ
地球の温暖化問題は非常に深刻です。その問題を解決するため、日本も2050年までにCO2などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという目標を表明しています。
日本におけるCO2排出量のうち、自動車を含む運輸部門の割合は17.4%を占め、そのうち、自家用乗用車のCO2排出量の割合は44.3%※を占めていることからも、自動車業界におけるEV化の動きはCO2排出量を抑えるために非常に重要です。
当社の技術で、より環境に配慮した、安全なEV開発に貢献することは、間接的に世界のCO2削減、環境にやさしい社会の実現に貢献していると考えています。
※令和5年5月17日国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」より参照